ストレスの中で

話を進めます。泉重千代さんの記録は、 一九九七年に一三二歳で亡くなられたフランス人女性ジャンヌ・カルマンさんによって塗り替えられました。カルマンさんはチョコレートが大好きで一週間に一キロ(P)を常に食べていたそうです。また彼女も、泉重千代さんも、大変な愛煙家であったことは驚くべき事実です。普通は長寿の人が愛煙家なんてイメージがありませんね? それに甘いものも、健康を害するものと見られがちです。しかし実際に、世界で最も長寿だった人たちは、そんな生活をしていたのです。いったい彼らが長生きを達成した裏には、どんな「秘密」があったのでしょう。このような長寿の人たちに共通した生き方についてはいろいろ解説がありますが、総じて彼らは、毎日の生活の中にほどよい運動があって、バランスのよい食事を三食とり、ストレスをためず、嗜好品も特に制限しないで、言いたいことを言い、楽しみを持っていたそうです。しかしこれでは少し抽象的すぎて、誰にでもできそうな感じを受けてしまいますね。果たして、本当にそうでしょうか?

 

現代人というものは、組織の中で言いたいことを言えず、常に他人からの評判を気にして、マスコミやインターネットから流れてくる情報に踊らされ、流行だというだけで欲しくもないものを買ったり、なにが本当の自分で、なにが自分にとって大切なものであるのか見失いがちです。二四時間、携帯電話がいつ鳴り響くかを気にして、たまの休みでも自分の時間を持てずにいて、月末になると、各種のローンが気がかりでならない……これだけ「追い立てられて」いれば、身体が変調をきたすのも仕方がないことでしょう。まさに現代人はストレスの中で暮らしています。その反動から、つい酒を飲みすぎたり、煙草を吸いすぎたり、過剰な摂取をしてしまうのではないでしょうか。つまり、がんじがらめにいろんなものに縛られているからこそ、自暴自棄ともいえる不摂生に陥ることがある。そんな現代人に対して、泉重千代さんやカルマンさんが過ごしていた毎日は、とても穏やかで健やかなものであったことがうかがえます。