微小な電気パルス

さて、徐福は不老不死の薬を手に入れたのでしょうか? 事実はわかりませんが、そのま
ま徐福は日本に留まったと資料に残されていますので、始皇帝が待ち望んだ薬が届けられる
ことがなかったのは確かなようです。二〇〇四年の医学レベルをもってしても不老不死は実
現していないのですから、徐福が嘘をついていたことは想像に難くないと思います。戻れば
今度こそ殺されてしまうでしょうから、始皇帝のところへは戻れません。そのまま(本当に
いたのなら)日本で楽しく過ごしたのでしょう。
ただ、始皇帝からかなりの報酬を(しかも前金で)もらつていたのですから、徐福は多少
なりとも霊薬の研究はしていたようです。天台烏薬(テンダイウヤク)というクスノキ科の
植物に徐福は辿り着いたといわれています。この植物の根から作る漢方薬は肺がん抑制作用
があるとして、今でも岐阜大医学部第二内科などで研究が進められています。それにしても、
おそらくただの偶然でしょうが、現代になって徐福の業績が認められたのなら、それはそれで面白い歴史の妙ではないか、と思うのです。

 

 

話を現代に戻しましょう。
今の医学レベルでは何歳まで人は生きられるのでしょうか? 科学技術の進歩は加速度的
に進んでいますが、今世紀中には人と全く同じ動きができるロボットが作れるのではないか
といわれています。臓器についても、人工心肺、人工肝臓などを駆使し、ロボットのような
手足を作って、これならがんにもならないし糖尿病にもならないという「サイボーグ」が、
ごく近い将来にはおとぎ話やSFの世界から飛び出して、現実の世界に歩き出すことになる
と思われます。

 

ところが残念なことに人の脳だけは人工臓器に置き換えることが困難で、不可能だと断言している専門家もいるほどです。ご存知のように脳はそれ自体が神経細胞の集合体で、ニューロンと呼ばれる約一〇〇〇億個の神経細胞と、それら同士を連結するシナプスという組織からできています。 一九五〇年代には手足などの運動神経と筋肉を結ぶシナプスの研究が詳細に行なわれたので、神経が微小な電気パルスで筋肉をコントロールしていることなどは、かなり克明にわかってきたのですが、肝心の中枢神経、つまり脳の内部でなにが起きているのかということは、いまだ「ほとんどが謎」のままなのです。

 

 

最近では、脳のシナプスは量子的(物質を構成する一番小さな粒子・波)な処理をしているといわれています。恐ろしいほどの進歩を遂げたコンピューターの中枢、CPUの内部も量子的な電子の世界ですが、脳の場合は量子から分子まで縦横無尽に絡み合い、複雑な作用の果てに私たちの「意識」というものを作っていると考えられているのです。近年「量子コンピューター」という概念もよく耳にするようになりましたが、もしも脳が人の手によっ作られるとしても、量子コンピューターが完全に実用化されてからになるでしょう。さすがの現代科学も、この辺の話になるとまだまだ「遠い夢」の領域にあるようです。