絶大な力を持った権力者は

太古の昔から、絶大な力を持った権力者はどれだけコストがかかつてもよいからと、不老不死の秘策を求めてきました。古代エジプト(エジプト古王国時代¨BC二七〇〇?二二〇〇年ごろ)は、太陽神ラーを崇拝する国家でした。エジプトの人々は西の彼方に没しても毎朝必ず東の空に現れて恐ろしい夜の間から解放してくれる太陽を神様としてあがめていたのです。第四王朝までは、太陽神宗教と王朝との間に対立もありましたが、古代エジプトの王様(ファラオ)たちは、第五王朝からは自分自身に太陽神ラーの子と称する名前をつけるようになりました。紀元前二七〇〇年ごろ、エジプト第三王朝時代の創始者であるゼセル(ジエセル)王が建造をはじめ、死後に王様が昇る太陽への階段として作られたのが、あの巨大なピラミッドたちです。ゼセル王のビラミッドは日本の国会議事堂に匹敵する大きさを持ち、世界最古の石造建造物とされています。これらのピラミッドの中には、将来医学が発達したときに王様が自分を蘇らせてもらえるものと信じて、遺体をミイラとして安置させました。当時の信仰は「死者の復活」がそのときに蘇らせてくれたお礼として払うために、たくさんの金銀財宝を一緒に入れておいたのですが、このことが後世になると盗掘という形でほとんどが洗いざらい盗まれてしまいました。さらに王様たちのミイラ(マミィと英語では呼びますが、『おかあさん』と勘違いしたら怖いですね)は、よほど尊敬されなくなってしまったのか、盗掘者によって「松明」にされたり、煎じて「薬」として飲まれたりなどと、さんざんな目にあっています。しかし近年でも、ミイラを強いX線(レントゲン)に当てて観察するなど、医療分野でも役立っているのは事実ですね。

 

 

さて、残念ながらエジプトの王様たちは、この先の将来に医学が発達してミイラを復活させることができるようになっても(そのまま復活されても恐怖映画みたいで怖いのですが)、コストが払えないために夢はかなわないのでしょうか。たとえば「クローン技術」が発達すれば王様の細胞のひとつを培養して、遺伝情報としては王様そのものの人間が「生まれる」かもしれません。しかし、もしもそうなったとしても記憶は複製できませんから別人であることには変わりがありません。今後どのような技術革新があるかは予想できませんが、今のところ王様が古代エジプト時代そのままに蘇ることは「かなわぬ夢」といえるでしょう。そう考えていくと、やはりお金は現世のうちに使っておかなければ意味がないようです。現代では、肉体から血液を抜いた上で液体窒素で凍結させて(これも現代風のミイラの形なのでしょうか)、将来医学が発達したときに解凍して蘇らせるというビジネスが始まっています。いわゆる冷凍睡眠(コールド・スリープ)ですね。最近だと、トム・クルーズが主演した映画『バニラ・スカイ』が、これを扱ったものでした。