滅茶苦茶働いて

私は医師という職業柄、今まで何人もの方が亡くなられる現場に立ち会い、「残念ながら、○時○分ご臨終です」という言葉を口にしてきました。十分人生を謳歌して満足された方のご臨終でさえ、ご家族には悲しみと寂しさがつきまといます。それどころかまだ若く、人生にやり残したことが、まだ幼い子供を残して、愛する奥さんや旦那さんを残してと、悔しくて悔しくて仕方がない思いを残していく、そのような方が亡くなられることもあります。そんなときには、やりきれなくなってその後一人でずっと泣いたことも一度や二度ではありませんでした。読者の皆さんには意外かもしれませんが、医師である前に私も人間ですから、患者さんの死を前にしたときには、弱い存在に過ぎないのです。

 

自分はなんて無力なんだろう……。いつもそう思いながら医療の現場にたずさわつてきました。それでも、その後必ず誓ったのです。もっともっと立派な医者になって必ず皆さんを救ってみせるぞ、と。滅茶苦茶勉強して滅茶苦茶研究して滅茶苦茶働いて、おかげさまですっかり良くなりました、と笑って言っていただける医師になるぞ、と。私が頑張ることで、ほんの少しばかりですが「不慮の死」を迎える方を減らせるかもしれません。たとえわずかであっても、それは前進だと思います。

 

しかしやはり、私が医師として診察し、治療やアドバイスのできる患者さんの数には限界があります。そこで、この本を書こうと思い立ちました。書籍ならば、もつともっと多くの方々に私の思いを伝えることができるはずです。さて、話を不老不死に戻しましょう。

 

医師として大学で医学を学び、医師免許を持っている私も、死ぬのはとても怖いです。自分が死んで、この世からいなくなること。もしもそれだけを真剣に考え続けたら、冗談ではなく発狂してしまうかもしれません。医者の私でもそのくらい恐れる死というものは、地位も名誉も財産も、およそ目につくものならなんでも自由にできる人であっても、たったひとつこれだけは自由にならないもので、前にしか進まない冷徹な歯車のようです。人間にとって、そしておそらくすべての生き物にとっての「根源的な恐怖」こそ「死」なのでしょう。死は避けられません。避けられないからこそ、なんとかして避けたい。人はず― っと昔からこのジレンマと戦ってきました。